学術情報

2023.05.28

第11回 乳酸菌の抗酸化能増強作用

 乳酸菌は腸内に生息し、乳酸を産生する細菌の総称です。具体的な菌種としてラクトバチルス(乳酸桿菌)、ビフィズス菌、ガセリ菌などがよく知られています。乳酸菌には整腸作用があるとされるのは、この乳酸が腸内pHを下げクロストリジウム菌などの悪玉菌の増殖を抑えるためです。この他に乳酸菌には様々な健康機能が確認されており、その1つとして血漿中のビタミンE濃度を上げ、生体の抗酸化能を増強する作用が報告されています。

 乳酸菌を含むイヌ用サプリメントを健康な高齢犬10頭に28日間給与したところ、血漿ビタミンE濃度は8.4%、抗酸化力は38.9%上昇したといいます。これより乳酸菌は抗酸化作用をもつビタミンEの吸収を応援することにより、高齢犬の健康維持・促進に有用と考えられます。

 

 

《 プロバイオティクスの継続給与が高齢犬に与える影響について 》 

                                                                                (出典:稲富太樹夫ら 開業獣医師 2013年)

 

 犬用プロバイオティクス(乳酸菌・酪酸菌・糖化菌含有サプリメント)を10~16歳の一般飼育犬10頭に28日間給与した。給与前後の血漿ビタミンE濃度および抗酸化力(BAP値)を測定した結果、共に上昇が確認された。乳酸菌プロバイオティクスは腸管内で抗酸化活性をもつビタミンEの吸収を促進し、これにより生体としての抗酸化力を増加させる作用があることが示唆された。

 プロバイオティクスは臨床的には下痢治療として活用されるが、継続的な給与により高齢犬の健康維持にも応用可能であると考えられた。

 

(平均値)

ビタミンE濃度(μg/dl)

抗酸化力(BAP値:μM)

給与前

131

1091

給与28日後

142

1515

※BAP値 …活性酸素の除去能力の検査測定値、数値が大きいほど抗酸化力が高い

 

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